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【特別企画】電源周りの好評アクセサリー集中レポート

フルテックの電源ボックス&ケーブルとNCF Booster、音質向上の効果を検証

公開日 2024/05/03 06:35 井上千岳
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オーディオの電源経路は、システムの大元なので良質なもので整えるのがセオリー。では電源ボックスやケーブルを吟味すると、どんな音質向上を見込めるのだろうか。ここでは電源周りのアクセサリーに豊富なラインアップが揃うフルテックから代表的な2モデルを揃え、使いこなしアクセサリー「NCFブースター」の効果も含めて入念にレポートする。

クオリティアップに有効な2セットを比較試聴



旬の電源ボックス2モデル。これに電源ケーブルを組み合わせて、電源経路の提案をしたい。

左上からフルテックの電源ケーブル「Powerflux-C-15 NCF-18」(389,620円・以下税込)、「The Empire」(52,877円)。下はケーブルホルダー「NCF Booster」と、電源ボックス「e-TP609 NCF」(236,555円)「GTO-D2 NCF(R)」(136,367円)

「GTO-D2 NCF(R)」と「The Empire」
背景の静けさが一段と深まり、実体感を高め冴えた新鮮な音



ひとつは電源ボックス「GTO-D2 NCF(R)」。アルミ筐体のフルテック最新モデルで、フラッグシップのコンセントカバーを始め、随所に同社の特殊素材NCFを使用して静電気対策を徹底している。また電源ケーブルはPC-Triple C導体による定番の「The Empire」を使用した。

音調自体は穏当な変化だが、音の背後がぐんと静かになっているのが分かる。色で言えば、闇の黒さが一段深くなった印象である。

バロックではそれによって粒立ちの明快さが際立ってくる。古楽器の艶やかで軽快な弾みの良さが生き生きと立ち上がり、アンサンブルが多彩な賑やかさに映えている。ことに、弦楽器など音のひとつひとつが伸びやかで、抑圧感から解放されているのが分かる。ノイズが絡んでいないのである。

ピアノは線が太く、骨格の強い鳴り方が変質なく引き出されて、陰影の深い表現にぐっと惹かれる思いがする。周囲の静寂感が高いため、余韻が鮮やかに広くしみわたる感触で、それに連れてピアノ自体の実体感やステージの情景がリアルに浮き上がる。空間の出方が一回り高品位なものになっている。

コーラスは見違えるほど響きが豊かで美しく、それが立体的に積み重なって心が洗われるような気がする。隅々まで信号が汚れず、微細な凹凸が歪みなくきれいに引き出されているからに違いない。

オーケストラは楽器の色彩感が明瞭で、新鮮さが冴えている。木管楽器の肉質感に富んだ粘りのある手触りや弦楽器の切れるような峻烈なタッチが多彩さの源泉で、それぞれの楽器が生きて息をしているような躍動感を感じる。大太鼓などの大音量の表現力がまた強靭でスケールが大きい。これが全て、電源の改善によるものなのだ。

ケーブルフォルダー“NCFブースターシリーズ”の最も低い高さ用の「NCF Booster-Signal-L」を、「e-TP609 NCF」に使用した例(「GTO-D2 NCF(R)」で使用の場合は、インシュレーターなどで電源ボックス側の高さを上げて用いる)

「e-TP609 NCF」と「Powerflux-C15 NCF-18」
空間や立体感を魅惑的に深め、冴えて活きの良い表情を描写



次は電源ボックスのハイエンドモデル「e-TP609 NCF」で、特殊素材NCFで周到な静電気対策を施している。また電源ケーブルも「Powerflux-C15 NCF-18」というスリムタイプのコネクターによる最高峰モデルで、α導体とカーボンやNCF、電磁波吸収体など、強力な素材を駆使している。

こちらはまた景色の違った出方で、音場が奥へ引いて遠近が深い。バロックではそうした空間性が効いて、楽器それぞれの位置感が自然に描き出されている。アンサンブル全体がすぐそこに広がっているような感覚で、力みのない伸びやかな音の出方が心地好い。バロック・ヴァイオリンの手触りが全開になったイメージである。

ピアノでもステージのリアルな感触が目覚ましい。楽器自体が見えるような位置感で、その周囲に広がる余韻が音場を実感させる。タッチに暴れがなく細かなニュアンスに富んでいるため、表情の起伏が非常に分かりやすいのだ。音そのものに感情が乗っているような聴こえ方をする。ノイズや歪みによって微細な情報が消されてしまうと、こういうところまでは出てこないのである。

コーラスは奥行きと広がりに富んだ空間の響きが大変魅惑的に描き出され、その空間に身を置いているような生々しい感興に満たされる。空間に充満するように余韻がたっぷりしているが、その中でもハーモニーが混濁することはなく、弱音の端の端まで静かさに溢れて新鮮そのものである。

オーケストラは鮮やかな色彩感に加えて峻烈な切れが冴えわたり、音楽自体の立体感や表現の活きの良さが一層強く引き出されている。木管楽器など確かに軽快ではあるがまた息の熱さのような肉質感も感じさせ、それが余計色彩の豊かさを盛り上げる結果になっている。大太鼓のドスの効いたアクセントも目覚ましいが、弦楽器のシャープネスと張りのある輝かしさも縦横無尽に描き出されている印象である。

「NCF Booster-Signal-L」
立ち上がりの瞬発力を高め、厚みと響きの豊かさが増す



仕上げに、お馴染みのケーブルフォルダー「NCF Booster-Signal-L」を加えてみたい。これは、本シリーズで最も低い高さに対応したモデルで、電源ボックスの入口に使う。

FURUTECHのケーブルホルダー「NCF Booster-Signal-L」20,592円。左右のノブを弛めることで、ケーブルや端子を受けて支えるホルダーの高さを調整できる

立ち上がりの瞬発力が高まるのは力が逃げないためで、バロックでもピアノでもエッジが効いて厚みと響きの豊かさが増す。またコーラスは余韻が音場に満ち渡り、オーケストラは切れがさらに強靭だ。いずれもエネルギーを余さず生かしているのが決定的である。


【GTO-D2 NCF(R)】●筐体:特製CNC加工特殊グレードアルミシャーシ+特殊フルオロポリマー製ダンピングフォイル(RFI防止)●IECインレット:「FI-06 NCF(R)」(非磁性ロジウムメッキ)●アウトレットコンセント:GTO-D2 NCF(R)専用・特製NCF仕様・非磁性ロジウムメッキコンセント●アウトレットカバー:「106-D Plus NCF」●内部配線:高純度μ-OFC Alpha-22(3.8sq mm)導体+2層フッ素ポリマーとポリエチレン絶縁体●サイズ:約108.5W×77H×283.4Dmm(スパイク部除く)●質量:約2.1kg(ネット)
【e-TP609 NCF】●コンセント:GTX-D NCF(R)×3個(6口)●インレット:FI-09NCF(R)●筐体:アルミ合金削り出し(アーキシャル ロッキングシステムで筐体と一体化した高剛性構造)●スパイク部:特殊セラミックパウダーとカーボンパウダー調合制振ゴム●内部配線:FURUTECH α-22ワイヤ(3.8sq)●電磁波吸収材:GC-303●最大使用電流:15A●サイズ:130W×56.5H×266Dmm●質量:2.94s
【Powerflux-C15 NCF-18】●接続部端子部(端子接点は非磁性ロジウムメッキ):プラグ「FI-50MNCF(R)」(カーボンファイバーNCF仕様)、IECコネクター「CF-C15 NCF(R)」(スリムタイプのカーボンファイバーNCF仕様)●ケーブル素材:α-導体(OCC素材)の高密度導体●絶縁材:カーボンパウダー調合の高機能PVCを用いた2重シース構造●ケーブル直径:約17.5mm●定格:15A 125【The Empire】●ケーブル導体:PC-Triple C●ケーブル構成:45本/0.32mmφ×3極●プラグ:FI-11M(G)●IECコネクター:FI-11(G)●絶縁材:特殊耐熱オーディオグレードPVC●インナーシース:RoHS指令適合オーディオグレードPVC●シールド:0.12mm OFC編組●長さ変更の特注対応可能
【NCF Booster-Signal-L】●クレイドル:フラットタイプ●高さ設定:基本(一番低い位置での高さ)23.8mm、延長81.4mm(オプションでさらに追加可能)●ベースユニット外部サイズ:89.8×66.0mm●外部サイズ:46W×106L×23.8Hmm●質量:基本約130.5g、延長約177.5g●付属品:エクステンションシャフトバー×2本、固定リング×2本、特殊PU滑り止め透明マット×4個


(協力:フルテック)

本記事は『季刊・オーディオアクセサリー192号』からの転載です。

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